幾センリの一次創作・ラクガキ置き場です。
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Spokesman 一人目 相澤 隼人 19歳 職業学生
何度もね、絵を燃やしてしまおうと思ったんだ。
何度もね、絵筆を捨ててしまおうと思ったんだ。
何度もね、何度もね、思ったんだ。
「これがいったい何の役に立つのさ?」
昔から運動は苦手で、顔が特別いいわけでもなくて、人と話すのもどこかためらってしまって、
愛想笑いと勉強が人より少しできるぐらいが、僕の取り柄だった。
小さいころの話さ。
詳しいいきさつなんて忘れてしまったけど、弁護士になるんだって言ったことがあったのさ。
すごいね、とまわりの大人は褒めてくれたのを覚えてる。
それで今は二流大学の法学部さ。
この前久々に近所のおばさんに会ってやっぱり弁護士を目指すのね、といわれたよ。
とりあえず得意の愛想笑いをしておきました。
きっと本当に燃やしたいのはさ。
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こちらは裁きの後編になります。前編はこちら→裁き/前編
(3)
色白で見事な金糸の髪、まだ幼さの残る端正な顔を思い出す。
ああ、きっと高値がついただろうに!
天使が心配だ。わざわざあのような男の元に自ら行くなんて。
天使の顔を見た時のあの態度の豹変ぶり。よからぬことを考えているのは学のない私でもわかる。
大方、売り飛ばして金にするつもりだろう。
無事だろうか。
あの子は私が生まれて初めてであった光なのだ。私を初めて化け物扱いしなかった唯一の美しき人。
「うん、なんとか聞こえる」
(3)
目覚めると既に日は落ちていた。急いで顔をあげ周囲を見るが、あの少年の姿はどこにもない。
なぜ寝てしまったのか!
しかしその理由は少年が残した書き置きで解決した。
「特効薬入りの紅茶はいかがでしたか。その後ぐっすりと眠られてしまったようなので、私は先にお暇致します。招待を今日はどうも。そうそう、一つだけ。私は貴方の悪事を告発しようだなんて考えておりませんので、ご安心を。全ては神が裁きます」
くそ、やられた!きっとあのカップを持ち上げた時にやったに違いない。
何が神だ、忌々しい。神などいるものか。こんちくしょう。神様なんて糞くらえ。
私は必死の思いで、窓から庭を覗き少年の姿を探すが、もう既に暗いのもあってよく見えない。
明るかったところでもう少年はいないだろう。
明るかったところでもう少年はいないだろう。
色白で見事な金糸の髪、まだ幼さの残る端正な顔を思い出す。
ああ、きっと高値がついただろうに!
私は拳を握りしめた。窓の近くでかわした少年との会話を思い出す。
そうだ、泳ごう。こんな時は水に身を任せるに限る。
そうだ、泳ごう。こんな時は水に身を任せるに限る。
今日は新月だ。月明かりもない。真っ暗な中で、ただひたすら水に揺られ、忘れてしまおう。
私は高台に上る。何も見えない。波紋の揺れさえ見えず、少しの胸騒ぎがする。
いやいや、高台から飛び出し、しばらくすれば暖かな水が私を包んでくれるはずだ。
神だのと書かれた変な書き置きのせいで、ざわついているだけだ。杞憂だ。
そういつもと変わらない。
神だのと書かれた変な書き置きのせいで、ざわついているだけだ。杞憂だ。
そういつもと変わらない。
私は深呼吸を一つして、いつものように地面を蹴って、宙に飛び出した。そう思えばすぐに派手な音が鼓膜を震わせ…
(4)
いつものように墓の見回りを終え、肋小屋へ戻る。(4)
天使が心配だ。わざわざあのような男の元に自ら行くなんて。
天使の顔を見た時のあの態度の豹変ぶり。よからぬことを考えているのは学のない私でもわかる。
大方、売り飛ばして金にするつもりだろう。
無事だろうか。
あの子は私が生まれて初めてであった光なのだ。私を初めて化け物扱いしなかった唯一の美しき人。
本当の天使ではなくても、私にとって天使なことには変わりがない。何かあっては困る。光を失ってしまったら私はどう生きていけばいいのか。
しかし我が家である肋小屋のドアを開くとそんな心配はすぐに杞憂だということが分かった。
「お帰り、イエスマン」
天使は椅子に腰かけ壊れたラジオを手にしながら、私を出迎えた。
随分前に帰っていたのだろうか。
机の上にはドライバーが散乱している。多分、暇で直していたのだろう。
間もなく途切れ途切れながらラジオから人の声が流れてきた。
「うん、なんとか聞こえる」
満足気に言うと、天使は鼻歌を歌いながらチャンネルを合わせ始める。
あの男の所に行ったのにまったくいつも通りだ。いや、むしろいつもよりご機嫌か。
あの男と一体何を話してきたのだろう。
気にならないといえば嘘になるが、問うことは止め、私は天使が散乱させたドライバーを片づけることにした。
あの男と一体何を話してきたのだろう。
気にならないといえば嘘になるが、問うことは止め、私は天使が散乱させたドライバーを片づけることにした。
黙々と私が片づけていると天使はラジオから目を離さずに言う。
「嫉妬かい?僕が別の男のところに行ったから」
「…なぜあのような男の誘いに乗ったのか気になるだけですよ」
天使に嘘をついても仕方ない。どうせ見破られてしまうだろう。私は正直に述べた。
「悪には鉄槌を!ってところかな?アイツは君を何度も化け物と馬鹿にしたからね」
「…あの男を殺したのですか」
この顔で化け物と呼ばれるのなんて慣れている。そんな汚れ仕事私に任せてくれればいいのに。
しかし天使は笑い飛ばした。
しかし天使は笑い飛ばした。
「どうやってこの骨みたいな腕で彼を殺すというのさ。まだ彼は生きているよ。彼は自ら死ぬんだよ」
そういうと彼は長い袖を捲って腕を出して見せた。白く痩せ細った腕に残る手錠の後が痛々しい。
くすくすと笑いながら天使は続けた。
「大体、彼の家には長居したくなくてね。信じられる?自宅にプールだよ、高い飛び込み台があるの。…イエスマンは今日も見回り?」
「墓守ですから」
私は突然振られた今更な話題に戸惑いながら答えた。
そういうと天使は墓守ね、と小さくつぶやいて複雑な顔をする。
「君は一日たりとも墓地の見周りをやめたことがない。習慣化しているね」
「そうですね、墓を見回らないとなんだか落ち着きませんね」
「あの男の習慣は自宅にあるプールの高台からとびおりて深く潜水することなんだってさ」
はぁ、と私が話の意図をつかめずに曖昧な声を漏らす。
もっと言葉を付け足すべきか悩んで口を動かそうとすると天使は口の前に人指し指を立てた。
もっと言葉を付け足すべきか悩んで口を動かそうとすると天使は口の前に人指し指を立てた。
ラジオから緊急のニュースが入る。天使はラジオを耳に近づけて耳を集中させた。
途切れ途切れだが、はっきりと確認することができた言葉が一つ。
「バーン=アディンセル氏の死亡が確認されました」
バーン=アディンセル。確か昼間の男の名前だ。
「あっは、死にました。彼は死にました!神よ、愚かなる魂をその広い御心で抱きたまえ」
その言葉を聞いて満足したのか天使はラジオをの電源を切った。
「どういうことです…?」
「あの男のことだから神さえも冒涜し、神の怒りを買ったんじゃないかな」
天使はそこで意味ありげにいったん区切りこちらを向いて満面の笑みを浮かべた。
「僕はプールの水を抜いてきただけだから」
「裁き」END
「裁き」END
※ちょっこっと人物紹介
世界観は「ガルルルルッ!!」
少年:
墓守から「天使」と呼ばれるまだ幼さの残る美しい少年。
スラムに身を置くものの、貴族の証である金髪と緑の瞳を持つ。
墓守:通称・イエスマン
少年から「イエスマン」と呼ばれる男。火傷で顔の半分が爛れている。
天使を敬愛し共に行動している。
バーン=アディンセル:
人身売買で金儲けをしている悪徳商人。いわゆる成金。
--------------------------------------------------------------------------------------------
(1)
地面を蹴って、私は宙に飛び出した。
地面より浮いたのはほんの一瞬。後は落ちるだけ。恐怖心などない。
そう思えばすぐに派手な音が鼓膜を震わせた。しかしそれも一瞬だ。音が遠ざかる錯覚。
水中から聞く音は普段とどこか違う。穏やかな水をまといながら、ほのくらい底を目指す。沈む沈む。
世界観は「ガルルルルッ!!」
少年:
墓守から「天使」と呼ばれるまだ幼さの残る美しい少年。
スラムに身を置くものの、貴族の証である金髪と緑の瞳を持つ。
墓守:通称・イエスマン
少年から「イエスマン」と呼ばれる男。火傷で顔の半分が爛れている。
天使を敬愛し共に行動している。
バーン=アディンセル:
人身売買で金儲けをしている悪徳商人。いわゆる成金。
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(1)
地面を蹴って、私は宙に飛び出した。
地面より浮いたのはほんの一瞬。後は落ちるだけ。恐怖心などない。
そう思えばすぐに派手な音が鼓膜を震わせた。しかしそれも一瞬だ。音が遠ざかる錯覚。
水中から聞く音は普段とどこか違う。穏やかな水をまといながら、ほのくらい底を目指す。沈む沈む。
すぐ底に手が届きそうなところで私の体は水面に浮かびあがった。
そのまま仰向けになって、飛び込んでできた波紋に身を委ね、空を仰ぐ。わずかな月明かり。
飛び込み台の丁度上に下弦の月が見える。頬を撫でる夜風が心地よい。
全ての悩み事も苛立ちも全て水が包んでくれる。
―明日はいいことがありそうな気がしてきた。
そう昨日思って、今日はスラム街を歩いていた。
汚い大人に交じってちらほら腹を空かせた子供が、スラム街に似合わぬ格好をした私を見つけてこちらを伺っている。
子供は好きだ。
力も頭も弱く、騙しやすくさらいやすい。そして良い値がつく。
「商品」を見定めながら、私は声をかける子供を見繕い―よそ見をしていたところ、肩に鈍痛が走り体がよろめく。
キッと前を向くとフードを被った二人組が立っていた。
大男と―フードを被って顔が見えないが多分子どもの二人組。
大男と―フードを被って顔が見えないが多分子どもの二人組。
肩を押さえているのを見ると私にぶつかったのは大柄な男の方らしい。
「すまない、よそ見をしていた」
文句を言おうとその顔を覗き込むと思わず息を飲んだ。
酷い火傷顔。跡が残るなんてそんなものじゃない。火傷で爛れた肌の方がほとんどだ。
「化け物が、気をつけろ!私を誰だと思ってる、この貧民ども!」
そう私が怒鳴ると大男の隣に立っていた小柄な方が大男の方を向きながらぼそりと呟く。
「…陳腐。小悪党の台詞だね」
バカにされるのは勘弁ならない。
私は反射的に手を伸ばし小柄な方の細腕を掴んで引き寄せた。
私は反射的に手を伸ばし小柄な方の細腕を掴んで引き寄せた。
勢いでかぶっていたフードがずり落ちる。
途端に目に入ってきたのは、スラム街には不似合いな金髪と緑色の瞳。
―貴族の証じゃないか!
途端に目に入ってきたのは、スラム街には不似合いな金髪と緑色の瞳。
―貴族の証じゃないか!
貴族の子供に手をだしてしまったか、と思ったが、すぐにいやいやと否定する。
世間体を気にする貴族のガキがこんな場所でこんなに痩せ細った腕をして、あんな化け物みたいな従者をつれているわけがないじゃないか。
貴族と娼婦の間に生まれてたまたま、貴族の証がでてしまったか、既に没落して力のないガキに違いない。
しかし改めて顔を見れば端正な顔立ちをしている。
男だろうか、女だろうか。声の低さからいって多分少年だろう。
少しやせ過ぎではあるものの、美しいことに間違いはない。
少しやせ過ぎではあるものの、美しいことに間違いはない。
これはまさしく昨日思った「いいこと」なのかもしれない。
これはいい商品だ。間違いない、高値で売れる商品だ。
これはいい商品だ。間違いない、高値で売れる商品だ。
大男が、私の手を振り払うためか、動こうとすると、少年は「よせ」と男を制止する。
どうやら、少年の方が立場が上らしい。
どうやら、少年の方が立場が上らしい。
私は顔の筋肉を急いで緩ませて、笑顔を取り繕った。
そんな私の態度を怪訝そうな顔で見るが少年が口を開く前に、私はさえぎる。
そんな私の態度を怪訝そうな顔で見るが少年が口を開く前に、私はさえぎる。
「あぁすまない!痛くしてしまって。君があまりにも痩せてしまっているからつい気になってしまって!」
私が少年の腕をなでると少年は明らかに嫌そうに顔を歪ませた。
「こんなに痩せてしまってかわいそうに!お腹は減っていないかね?子どもが腹を減らすだなんて可哀相に。あぁ失礼した私はこういうものだ」
私は相手が字なんて読めることを期待せず名刺を目の前にかざす。これで読めればさらに価値がつきそうという思惑をもって。
「バーン=アディンセル…?」
これはなんというラッキー。私は胸元へ名刺をしまい直す。
「君は字が読めるのか!あぁもったいない、字も読めて、君は自分の姿を鏡で見たことあるかね、君はとても美しい」
「それはどうもありがとう」
少年はにこりと口元だけ緩ませ、しかし態度は触るなと言わんばかりに腕を横にはらった。
私の腕は振り払われるが、今はそんな失礼な態度も気にならない。
目の前のこれをなんとしても手に入れたいと思って私はまくしたてる。
目の前のこれをなんとしても手に入れたいと思って私はまくしたてる。
「もったいない、君はこんなところで落ちぶれている人材じゃない。君が望むなら私が支援してあげよう。君はきっと逸材になる。
いやだろう、こんないつ飯にありつけるかもわからない、いつ襲われるかわからない、こんな希望もないところで朽ちるのは?
君はそんな化け物といるのも嫌なんじゃないか。守ってもらいたいから仕方なくいるんだろう」
「…」
少年は押し黙り下を向いた。拳に力をいれ、唇をかみしめているようにも思える。
もうひと押しだ。もうひと押し!
「さぁ我が家に君を招待しよう。何も必要なものなどない、君の体ひとつあればいい。別世界につれていってあげよう。まずは暖かい服と暖かい食事が君を待っている!」
私は強引に話を進め、もう一度少年の手を掴み有無を言わさず、スラムの出口へと踵を返す。
「…待て!」
醜い男が私たちの背に向かって怒鳴った。少年が振り返る。
迷うな迷うな。私と共に来い!
「何を迷うことがあるのか、ここにいても、あの化け物といても未来はないよ、君は賢いからわかるね?」
少年はしばらく考えていたがやがて男に背を向け前を向きなおす。
「 I'll be right back」
少年が口早に何かを呟いたが異国の言葉なのか聞き取れない。
しかし私におとなしくついてくるところを見るとさよならのあいさつか何かだろう。
しかし私におとなしくついてくるところを見るとさよならのあいさつか何かだろう。
目の前に誘惑をぶらさげてやれば、子どもなんてこんなものだ。
私は今日一番の笑みを浮かべた。
(2)
広い自室に少年を招き入れる。
召使に暖かい食事を持ってこさせ、紅茶を注がせて外にだす。
召使に暖かい食事を持ってこさせ、紅茶を注がせて外にだす。
召使の同席をゆるしたことはない。私の仕事は私だけでやる。
私が大金をどうもうけているか薄々感づいている者もいるだろうが他言無用だ。
私が大金をどうもうけているか薄々感づいている者もいるだろうが他言無用だ。
彼らも職なしにはなりたくなかろう。はっきりと見てしまえば誰かに言いたくなるものだ。
冴えない三流の商人が人身売買でのし上がったなど噂ぐらいにしておくのがよい。
一方、少年は窓の外を見て暇をつぶしていた。そして一点を指さす。
私も少年の横に立ち指した方面を見ると私のお気に入りの場所が見えた。
私も少年の横に立ち指した方面を見ると私のお気に入りの場所が見えた。
「あれは…プールですか。自宅にプールなんて豪勢ですね。…いい仕事をしているみたいだ」
そう、私は金になる仕事をしている。君はそのための大事な商品だ。
頭ではそんな言葉を浮かべながら、口では会話を合わせる。
「君は泳ぐのが好きなのかい?」
「いえ、昔溺れかけたことがありまして、それからどうにも水が苦手なんです。どうにも大量の水があると思うと落ち着かないな…」
「水は脅威にもなるが、基本的には暖かく包み込んでくれるものだ。ほら、あそこに高台が見えるだろう。私は毎晩あそこから、飛び込み、深く潜り、水に身を委ねるのが好きなんだ」
「それはクレイジー」
少年は苦笑し、私の横をすり抜けて料理へと戻る。
そして紅茶の注がれたカップを持ち上げ、今までに聞いたことのない無邪気な声をあげた。
そして紅茶の注がれたカップを持ち上げ、今までに聞いたことのない無邪気な声をあげた。
「うわぁ、きれいなカップ!」
背中ごしに見るだけだが、きっとその顔には子供らしい笑顔が浮かんでるんだろう。やっぱり大人ぶったところで子供は子供だ。
「それじゃあ席に着こう。料理を食べたらお風呂に入って今日はもう寝るといい」
そうして私と彼のささやかな最後の晩餐が行われた。
続き→「裁き」後編
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