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幾センリの一次創作・ラクガキ置き場です。
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再録 ウィリアムとダニエルの小噺


(1)

「私すごく感謝してるの」
女は夜の静寂を破って甘い声で囁いた。
一糸まとわぬ姿で、白く細い腕を伸ばし隣で寝る男の身体に絡みつく。
"一通り"のことを終えた男は少しけだるそうに顔を少しだけ女に向ける。
鼻にまでかかる長い前髪が邪魔し、表情は伺いしれないが、女は気にすることなく続けた。
「私、あなたと出会って嘘みたいに生活が変わったわ」
女は手を伸ばし男の頬を撫でる。
「綺麗な服、美味しい食べ物、暖かな部屋、何より明日に困らない生活がくるなんて思ってなかった。なんの価値もない私をあなたは救ってくれた。毎日夢みたい」
「…そう」
男は短く答え、にっこりとほほ笑んだ。
―ああ愛しい人。
女は男の微笑みに愛しさを感じ、キスをねだろうと唇を近づけた。
男もそれに答えるように自分の唇を相手の唇に近づけ―
勢いよく噛み千切った。
「―!?」
声にならない悲鳴をあげる。
何がおこったのか分からない。
ただ確かに伝わる言葉にならない痛みと、血の匂いが現実を知らせていた。
女は混乱した頭で男を恐怖の目で見つめる。
口の周りを血だらけにした男はこちらの混乱をよそに笑顔で告げた。
「夢ってのはさ、終わりがあるんだよね。つまりはそういうことだよ」



(2)
部屋にはいってまず目にはいってきたのは、
床にはりめぐらされた線路と脱線し転覆した列車…の玩具。
あちらこちらに街を模した玩具が半壊したまま転がっている。
片づけのできない子どもの部屋と思えばまだ微笑ましい。
しかしこの部屋の持ち主が自分と同じ20を超えたいい大人だという事実が部屋に不気味さを与えていた。
友人―否、知人とすべきか―がどこか狂人じみているのは今更の事実だ。
「適当に座ってよ」
転がる玩具の合間をぬって歩き、ベッドのふちに腰掛けた狂人が言った。
暴力を振るうのが趣味という狂人の隣に座るのはごめんだ。
適当な合間をとれる位置がいい。
俺はあたりを見渡してベッドと一直線上にある勉強机らしきものへと向かう。
勉強できるスペースなど存在していないに等しく、物置という方が正しい。
あそこに寄りかからせてもらおう。
玩具を踏まないよう机へと向かうと、机の上にキラリと光るこの部屋の主らしからぬ物が目に入った。
瓶詰された指輪。
どれぐらいの数があるのか分からないが、瓶の半分ほどつまっている。
ピンクゴールドやダイヤのあしらわれたデザイン、
リングのサイズからいって全て女物の指輪だろう。
「女物の指輪を集める趣味があるとは知らなかったな」
「あぁ、それね、今まで付き合った女の子の忘れ物」
ビンを持ち上げ揺らすと金属同士がこすれカチャカチャと冷たい音が鳴った。
「こんなものとっといて、今の彼女は、嫉妬しないのか――ローザだったかな?」
「君の、嫉妬深すぎる恋人とは違うよ。
 ちなみにローザは3つ前の彼女だ。今は―いや昨日までヴァネッサと付き合ってた。
 あぁそうするとローザは4つ前の彼女になるな」
他人事のように、うすら笑いを浮かべながら狂人は言った。
「別れたばかりか」
「あぁ、うん、どっかいっちゃったんだ。最後はね、いつも皆どこかいっちゃう」
寂しさなどまったく含まれていない声。
寂しさが含まれていないことはたいして気にならなかった。
こいつに人間性など期待していない。
ある程度想像できる。むしろ確信に近い。
おそらく彼女らは―
 俺は胸ポケットから煙草とライターを取り出した。
ライターの着火ローラーをこする。
が、オイルが少なくなっているのかつきが悪い。
一日に1カートン消費するとライターの持ちもさすがに悪い。
油を頻繁にさすのはめんどくさい。
タバコを減らすか、ライターの手持ちを増やすか。
脳内全開一致で答えは後者だ。決まり。
火がつくまでの間、暇潰しとして俺はいくつか尋ねた。
「ヴァネッサもローザと同じ、髪色は茶色で瞳の色は青色だったか」
「そうだね、茶色で青色だ。貴族じゃない」
「ヴァネッサもローザと同じ、スラム出身で、身よりはいなかったのか」
「そうだね、行方不明になっても探すような人はいなかったんじゃないかな」
なるほど。
いつものこいつの女の変わらないステータスだ。
スラム出身の、身寄りなし。
そして大体一か月で変わり、結末は行方不明。
俺が納得するのと、同時に火がつく。
しばらくタバコを口にくわえ、答えの代わりに煙を吐き出した。
おそらく彼女らは―
まぁいいや。
街のどこも寸分たがわず正常に機能している。
同情する相手もいない。誰も泣いちゃいない。
その程度の命。
俺はつきが悪くなったライターを見つめ、
脳内の議題は既に新しいライターをどこで買うかに変わっていた。




(あの教会には、宗教弾圧で殺された亡霊がでるんだってさ)



髪の毛試行錯誤

 
オレンジ寄りが多かったので青系



駅員さん



白髪よりもしくはオレンジよりの金髪が好き
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History
15/9/13
TOP絵変更+小噺に【夢から醒めた彼女らの行方】追加。


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